もののあわれについて853

これは、昨日の御返りなれば、見せ奉る。大納言「ねたげにも宣へるかな。あまり好きたる方にすすみ給へるを、許しきこえずと聞き給ひて、右のおとど、我等が見奉るには、いとものまめやかに、御心をさめ給ふこそをかしけれ。あだ人とせむに足らひ給へる御さまを、しひてまめだち給はむも、見所少くやならまし」など、しりうごちて、今日も参らせ給ふに、また、 大納言 本つ香の にほへる君が 袖ふれば 花もえならぬ…

続きを読む

もののあわれについて852

この君召し放ちて語らひ給へば、人々は近うも参らず、まかで散りなどして、しめやかになりぬれば、匂宮「東宮には、いとま少し許されためりな。いと繁うおぼしまとはすめりしを、時とられて人わろかめり」と宣へば、若君「まつはませ給ひしこそ苦しかりしか。お前にはしも」と聞こえさして居たれば、匂宮「我をば人げなしと思ひはなれたるとな。ことわりなり。されど安からずこそ、古めかしき同じ筋にて、東と聞こゆなるは、あひ…

続きを読む

もののあわれについて851

若君、内へ参らむと、宿直姿にて参り給へる。わざとうるはしきみづらよりも、いとをかしく見えて、いみじううつくしと思したり。麗景殿に御ことづけ聞こえ給ふ。大納言「ゆづり聞えて、今宵もえ参るまじく、悩ましくなむと聞こえよ」と宣ひて、大納言「笛少し仕うまつれ。ともすれば、御前の御遊びに召し出でらるる、かたはらいたしや、まだいと若き笛を」と、うち笑みて、双調吹かせ給ふ。いとをかしう吹い給へば、大納言「けし…

続きを読む