もののあわれについて859 2016年12月25日 少将は、この源侍従の君の、かうほのめき寄るめれば、これにこそ心寄せ給ふらめ、わが身はいとど屈し、いたく思ひ弱りて、あぢきなうぞ恨むる。 少将 人はみな 花に心を うつすらむ ひとりぞまどふ 春の夜のやみ うち嘆きて立てば、内の人の返し、 女房 をりからや あはれも知らむ 梅の花 ただかばかりに 移りしもせじ 少将は、この源侍従の君が、こうして、姿を見せてい…続きを読む
もののあわれについて858 2016年12月24日 侍従の君、まめ人の名をうれたしと思ひければ、二十よ日のころ、梅の花盛りなるに、「にほひ少なげに取りなされじ。好き者ならはむかし」と思して、藤侍従の御もとにおはしたり。中門入り給ふほどに、同じ直衣姿なる人立てりけり。隠れなむと思ひけるを、引きとどめたれば、この常に立ちわづらふ少将なりけり。寝殿の西おもてに、琵琶、筝の琴の声するに、心をまどはして立てるなめり。「苦しげや。人の許さぬこと思ひ始めむは、…続きを読む
もののあわれについて857 2016年12月23日 夕つけて、四位の侍従参り給へり。そこらおとなしき若君達も、あまたさまざまに、いづれかはわろびたりつる、皆めやすかりつる中に、立ちおくれてこの君の立ち出で給へる、いとこよなく目とまるここちして、例の、ものめでする若き人達は、「なほことなりけり」などいふ。女房「この殿の姫君の御かたはらには、これをこそさし並べて見め」と聞きにくく言ふ。げにいと若う、なまめかしきさまして、うちふるまひ給へる匂い香など、…続きを読む