もののあわれについて863

これを聞くに、蔵人の少将は、死ぬばかり思ひて、母北の方をせめ奉れば、聞きわづらひ給ひて、雲居雁「いとかたはらいたき事につけて、ほのめかし聞こゆるも、世にかたくなしき闇のまどひになむ。思し知るかたもあれば、推しはかりて、なほ慰めさせ給へ」などいとほしげに聞こえ給ふを、苦しうもあるかな、と、うち嘆き給ひて、玉葛「いかなる事と思ひ給へ乱れてなむ。まめやかなる御心ならば、この程を思ししづめて、慰め聞こえ…

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