生きるに意味などない89

人はみなふたつの過去をもっている。われわれは思い起こしたい過去と忘れ去りたい過去があるのである。人はだれも同時にこのふたつをもつ。いいことだけを思い出そうとしても、その思い出にくっついているいやな思い出にふれざるをえない。いいことばかりだと言える人は、すでに悟った人でなければ、よほどおめでたいのではないか。他方、悲しい思い出しかないという人はどこかで悲しみに付随したよろこびのわからない人なのだ。…

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