もののあわれについて910

年かはりぬれば、空のけしきうららかなるに、みぎはの氷とけたるを、「ありがたくも」と、ながめ給ふ。ひじりの坊より、「雪消えに摘みて侍るなり」とて、沢の芹、蕨など奉りたり。いもひの御だいに参れる。「所につけては、かかる草木のけしきに従ひて、行きかふ月日のしるしも見ゆるこそをかしけれ」など、人々の言ふを、何のをかしきならむ、と聞き給ふ。 姫 君がをる 峰のわらびと 見ましんば 知られやせま…

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