もののあわれについて936

わりなくておはしましては、程なくかへり給ふが、あかず苦しきに、宮も物をいみじく思したり。御心のうちを知り給はねば、女方には、「またいかならむ。人わらへにや」と思ひ歎き給へば、げに心づくしに苦しげなるわざかな、と見ゆ。京にも、かくろへて渡り給ふべき所も、さすがになし。六条の院には、左のおほいとの、片つ方に住み給ひて、さばかりいかでと思したる六の君の御事を、思し寄らぬに、「なま恨めし」と思ひきこえ給…

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