もののあわれについて953

早蕨 さわらび やぶし分かねば、春の光を見給ふにつけても、「いかでかくながらへにける月日ならむ」と、夢のやうにのみ覚え給ふ。行きかふ時々にしたがひ、花鳥の色をも音をも同じ心に起き臥し見つつ、はかなきことをも、もとすえをとりて言ひかはし、心ぼそき世の憂さもつらさも、うち語らひ合はせ聞こえしにこそ、なぐさむかたもありしか、をかしきこと、あはれなるふしをも、聞き知る人もなきままに、よろづかきくらし、…

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