もののあわれについて963

宿木 やどりき その頃、藤壺と聞こゆるは、故左大臣殿の女御になむおはしける。まだ東宮と聞こえさせし時、人より先に参り給ひにしかば、むつまじくあはれなる方の御おもひは、ことにものし給ふめれど、そのしるしと見ゆるふしもなくて年経給ふに、中宮には、宮たちさへあまた、ここらおとなび給ふめるに、さやうのことも少なくて、ただ女宮一ところをぞ持ち奉り給へりける。わがいと口惜しく、人二おされ奉りぬる宿世、なげ…

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もののあわれについて962

人々も、「世の常にうとうとしくなもてなし聞こえさせ給ひそ。限りなき御心の程をば、今しもこそ、見奉り知らせ給ふさまをも見え奉らせ給ふべけれ」など聞こゆれど、人づてならず、ふとさしいで聞こえむことの、なほつつましきを、やすらひ給ふ程に、宮、いで給はむとて、御まかり申しに渡り給へり。女房たちも、世間並に、よそよそしくお扱なさらずにいる。この上もない、お心のうちが、お分かりになっていらっしゃることを、今…

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