その関係を知るからこそ、数千年にわたる、今日の性のモラルが形成された。
だが、性交と、生殖の関係は、いつの時代も、すべての人が知っていた訳ではない。
このエッセイの最初でも、取り上げた、人類学者、マリノウスキーは、トロブリアンド島での、調査結果、島民たちは、性交が生殖に関係があることを、否定したという。
島民に、正しい知識を与えようとした宣教師に、
とんでもない、宣教師たちは、間違っている。未婚の女の子たちは、いつも性交をしていて、精液が溢れるばかりだ。それでも、子供はできない・・・
と、いうことで、マリノウスキー自身も、驚いた。
島民は、彼らの習慣に従い、未婚の女は、自由な性交を行っているが、不思議にも、例外をはぶくと、ほとんど、妊娠しないという。
では、どうして、子供が出来るのかと、問えば、
霊が夜分に、子供たちを連れてくる、と答えたのである。
現在でも、10歳くらいになると、親に、どうして子供が出来るのかと、問うことがある。
動物の場合は、本能的に、性交を行う。そして、子供が生まれる。それは、本能的行動の結果である。
しかし、動物には、生殖の知識はない。全く、知識を必要としない。
だが、人間は、生殖の知識が必要である。
つまり、教育である。
更に、生殖と、性交の関係を知っても、すべての人間が、十分な性行為を可能とする訳ではない。
性交について、何らかの知識なしには、それを十分に行うことは、出来ないのである。
そこで、何処から、その知識を得るのか・・・
現在、私は、不十分な知識によって、性行為を知ると、考えている。
つまり、友人からの情報、性に関する書籍、雑誌の記事、映画、ポルノ雑誌などである。
それは、正しいものか・・・
人によっては、実に、偏狭な知識を得る。
更に、避妊法により、生殖と性交が、セットにはならない、時代である。
スウェーデンでは、30年前ほどは、子供を独り生むために、千回以上の性交を行うと言われていた。
実は、人間は、性交と生殖の関係を知ってからも、生殖のためではない、性交を行ってきたのである。
これは、性交が生殖だけではなく、生殖とは、関係ない性行為をしているということである。
つまり、快楽のためである。
これは、生殖と分離した、性行為ということである。
避妊具を用いる性交は、まさに、生殖とは、全く関係ない、生殖否定の行為である。
これは、すでに古代ギリシャの貴族たちにより、実現されていたことである。
さて、日本では、明治期まで、それぞれの村で、青年男女のための、合宿所である、若者宿、などの習俗が存在した。
そこで、先輩たちから、性についての、指導を受けた。
あるいは、夜這いと言って、年上の女から、手ほどきを受けるという、習慣があった。
現在は、そんな宿のシステムはない。
だから、その情報は、上記に上げたようなものである。
とても、偏狭になる場合が多々ある。
時代は、変わる。
現代の人々の、性行動の意識を調査しているものを、私は、見ていない。
おおよそ、50年から、30年前の調査記録である。
それは、つまり、相当に、現代の性行動が、複雑化している証拠である。
これから、その中から、特徴的なものを取り上げるが・・・
その前に、家族計画と言われる、計画的に子供を作るという、考え方が出来た。
だが、それも、避妊方法により、女が妊娠、出産、育児の苦労を、より少なくするという意味で、そして、人間が、ただ、生存と種族保存だけに、満足せず、より豊かに、楽しい人生を送ると、考えるようになったことも大きい。
つまり、生殖と性行為の、分離である。
更に、世界的問題である、人口増加である。
1965年の世界の人口は、5億人程度である。
その後、1850年には、11億人と、二百年で、二倍以上になり、1950年には、25億人になり、百年近くで、二倍半に増加した。
現在は、70億人以上である。
これでは、人類滅亡の危機となる。
要するに、食べ物がないのである。
こうした事態を迎えて、性交と生殖を、単なる個人の問題として考えるだけではなく、生殖と性交の分離は、社会的要請になり、それ以上に、人類的悲願にるなるだろう。
日本の場合は、少子高齢化であるが・・・
それを、恐れる心配はない。
ただ、経済的なことだけを、見ていると、誤る。
労働力が失われる・・・
そんなことは、無い。
ロボットの時代なのである。