4年ぶりのほほ笑み 9

 バナナマフィンに生クリーム、シャーベットを添えて。


 わたしは、パタヤの細い路地のスウィーツ専門店で、夜の訪れを待っている。


 スウィーツ専門店といっても、たたみ一畳ほど。味は絶品。甘味にうるさいタイ人の舌をもとろかす仕上がりだ。


 バナナマフィンのさいごのひとかけを口に運びつつ、ホテルのネット予約を知らなかったら大損こくな、と思う。


 ぎりぎりまでホテルが決まらず、今回はじめてアゴダという、アジア一円のホテルほとんどがネット予約できるアプリを使った。支払いはカードなので、手続きも簡単。しかもホテル到着直前まで予約ができる。


 ここまでネット予約が進んでいるとは、ついぞ知らなかった。どういうからくりか、ホテルの受付で素泊まりを頼むより、かなり安く上がる。ワンランク上の部屋にしても負担に感じない。


 サワッディーサイアム・ホテル、9階の、十分に清潔な部屋を、一泊770バーツ(2,600円)で予約できた。部屋が気に入ったので、受付の女性に延泊できるかときいてみた。


「できますけど、ただ…」


 と通常価格を示す。900バーツ。驚いてアプリで確認すると、さらに値が下がって620バーツになっている。


「きっと、アゴダで予約し直した方が、いいですよ」と受付嬢までがいう。


 ほんとうに、アゴダやブッキング・ドット・コムを知らないと、損。


 さて、パタヤは、北部、中部、南部と分かれている。私の泊まったのは中部で、乗り合いタクシーが一晩中周回しているので、どこへ行くのも便利。


 4年ぶりのパタヤの変化を見届けようと、あえて歩いてみた。変わったのは、物価が上がったこと。およそ1.5倍になっている。海辺に、警察の派出所テントができた。ピンクネオンのぎらぎらした通り、奥の奥まで入りこんでも、ぎっちりと酒場で埋め尽くされている細道などは、変わらない。


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(新しい王様、ラーマ10世の肖像が百貨店前に)


 何となく、女の人の顔が、均一になってきた。美容整形が、安価で庶民にひろがったためだろう。タイ人は丸っこい鼻が愛らしいのに、三角定規みたいだ。


 パタヤの街全体にみなぎる、はちきれんばかりの熱量は、変わらない。いや4年前以上かもしれない。


 接客がしつこくなさそうな所を選び、オープン・バーに入った。4年間、タイがどう変わったのか、意見をききたかった。


 話し相手をしてくれたのは、肩に“虎”という漢字の、少し年季の入ったタトゥーのある、チェンマイ女性。それとなく水を向けると、彼女は鋭い切り口でタイ政局を論じはじめた。