4年ぶりのほほ笑み 12 タイ旅日記

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 宝塚歌劇団の根っからのファン、という人たちがいる。スターそれぞれにファンが着くのはもちろん、宝塚自体が好き、という人もいるだろう。長年宝塚を観続けて、若手がだんだん成長してゆく様や、ベテラン演者が円熟味を増すのを追いかけるのも、また楽しみの一つ。


 わたしにとっては、その宝塚が、“ティファニーショー・パタヤ”だ。かれこれ10年程、通い続けている。ティファニーショーは、北パタヤに劇場を持つ、創業30年ほどの老舗キャバレー・ショーだ。


 観光客の目を引くのは、何といっても、演者が全員、FtMトランスジェンダーであることだ。つまり、男性として生まれはしたけれど、長じて女性として社会生活をはじめた人びとである。


 いわゆる性別適合手術(かつて性転換といわれた)を受けているか、いないかは、問題ではない。実際、“オペ済み”ではなくとも、外目からは女性としか見えない人も大勢いる。


 はじめて劇場へ足を運んだ夜、完全に圧倒されてしまった。演者の命をかけたパフォーマンスに、脳天を木刀でかち割られたくらいの衝撃を受けた。


 それからファンになって、今に至る。幸運なことに、初めての夜、ぽやんと立っていた私にOさんが声をかけてくれた。いまでも交友は続いている。一緒にOさんの故郷まで行き、寺祭りに参加した事もある。


 Oさんの手引きで、ティファニーのスター俳優とも知り合えた。一緒にナマズ料理を手でつまんで食べたりした。舞台では無類の輝きを見せる彼女たちの、気負わない姿が見れたことは、ファン冥利に尽きるというもの。


 じつは、タイのいわゆるキャバレーショー(註1)のスターには、宝塚歌劇のスターと同じように、熱狂的なファンがついている。ファン層の拡がりは、世界規模である。日本にも、彼らの取り巻きが多数存在し、いかに自分が彼らと仲が良いかを自慢し、あるいは嫉妬しあう。


 わたしは、そんな争いに関わらないまでも、心底からのファン。演者としての彼らに、毎回観るたびに驚かされている。ティファニーショーは常に新しい。4年ぶりに観る機会に恵まれたが、大幅にショーの内容が改良され、プロジェクト・マッピング等の最新技術が取り込まれていた。


 ティファニーショーは株式会社で、いまは二代目の女性社長だ。新進気鋭のビジネスパーソンでもあり、タイ経済界を若くして引っ張っている。バンコク・ポスト紙で一面まるまる特集された事もある。社長のインタビューによれば、創業者である先代の父親が、大のショー好きで、一日中仕事場にいたという。幼い頃、小学校から帰った彼女は、毎日ショーを見て育った。


 父の情熱を受け継ぎ、1000人収容可能な規模まで劇場を拡大した。舞台装置も刷新し、常に客の好みを探り、3ヵ月ごとに演目を見直した。そうして練り上げられた舞台は、世界中から集まる観光客を楽しませている。


 ティファニーの面白さ、深さについて、次回、可能な限り迫ってみたい。


(註1)タイ語の発音では“カーブァーレーチョー”に近い。単に“チョー”とも。女性装をした男性の演じる舞台を広くそう呼ぶ。パタヤのティファニーショーやアルカザール、バンコクのカリプソといった大箱から、地方まわりをする小集団まで、規模の大小はさまざま。