性について310

第三のジェンダー、二つの魂を持つ者へと、転換した事例については、男に比べて、女の研究は、進んでいない。


だが、この社会的役割が、少女や女性たちにとって、重要なものとされた伝統的文化は、多数存在する。


二つの魂を持つ者は、すでに、母の胎内で、自分の未来を直感的に、察知すると考えられていた。


その例は、モハーヴェ族のフワメイは、将来、クロス・ジェンダーになる夢を、胎内で見たという。

また、断食や霊感、予言がもたらす結果を元に、やがて、ある女性が二つの魂を持つ者になると判断する集団もある。


その者たちは、子供の頃から、男の日々の営みや務めに従事したいという意志を示す。

男の子と遊び、狩猟などのために弓矢を作り、やがて、二つの魂の役割を担うという者として、正式に認められる。


更に、適齢期には、女の中から、妻を選ぶ。

また、男としての、ジェンダー役割の要求に添って、行動する。


そして、その共同体の男として、儀礼上の義務を果たすのである。


通常は、霊的な成長を遂げ、戦闘に加わり、戦士としての名声を手に入れる例が多いという。

更には、シャーマンにまで昇り詰めることもある。


生物学的には、正常であるが、その社会的役割から、女ー男は、出産しなかった。

性行動に関しては、モハーヴェインディアンの場合、女のパートナーの間に、満足のゆく性的関係が成り立ち、愛情も存在したと考えられていた。


さて、現在は、二つの魂の役割は、かつての姿を留めていない。


それは、アメリカインディアンに対する、植民地支配、ゲイ排除の風潮、そして、インディアン社会における、普遍的ゲイ・コミュニティの不在がもたらした結果である。


現代のアメリカインディアンは、性的志向より文化的遺産を重視し、二つの魂のアイデンティティが主張されることもない。そのうえエイズウイルスの脅威は衰えを知らず、感染者の増加とともに、二つ魂のおおらかな性は居場所を失っている。

人類学者をはじめとする研究家にとって最も難しいのは、二つの魂を持つ女ー男と密接な関係にある生物学的女性との接触である。それは並大抵の努力では達成できないが、そういった事実から研究家は、セイム・ジェンダー関係の人類学的研究には多大な困難がつきまとい、忍耐強さと謙虚さが肝要だということを再認識させられる。

ギルバート・ハート 改行は私


新世界に見られる、ジェンダー転換的な役割やホモエロテック関係は、中南アメリカの各地に存在する。


メキシコ、ブラジルのような、複雑、近代化の進みつつある国々の伝統的慣習については、特にスペインの支配下にあった時代を振り返ると、ホモフォビア、ホモセクシャル行為に対する処罰の事例は、枚挙にいとまがない。


古代ペルー、メキシコ先住民の伝統文化は、エロスを表現した工芸品に溢れ、その中では、ホモエロテックな題材も取り上げられていた。


寺院、神聖な作品に同性間の性的関係が、表現されているという事実は、征服者であった、スペイン人にとって、衝撃的なものだったという。


それは、ジェンダーや男女間の、自然な性関係に対する、カトリック教会の教えと、真っ向から対立していたからだ。


スペイン人が、新大陸征服に乗り出した当時、教会は、男同士の関係をソドミーとして扱っていたのである。


それは、悪魔崇拝に近い、邪悪な行為、妖術と見なされ、死罪に相当した。

たとえ、新世界であっても、ある意味では、異端心審判の主導者を任じていたスペイン、ポルトガルの修道士は、ソドミーを道徳上の問題として、認識していた。


だが、一部の地域では、クロス・ドレッシングや第三のジェンダーは、珍しいものではなかったのである。


これらの「悪」に対する聖職者たちの批判は、植民地領有国による、先住民族文化の征服と破壊を、正当化する理由となり、それはインディアンが継承してきた、ソドミーの習慣が、残らず、一掃されることを意味した。


アメリカ大陸の偉大な文明、古来から伝わる崇高な習慣は、その大半が、彼らの神々、神話と共に、姿を消したのである。


だが、ジェンダー転換を伴うセクシャリティの事例は、今なお、存在している。


メキシコである。


メスティーソ文化を含む、メキシコ文化では、男らしさは、高く評価され、褒めたたえられる。


メキシコ文化は、男女間の対比を強調し、男であること、度胸、攻撃性、力強さ、性的優位性の誇示は、マチモスとして知られる。


マチモスとは、マッチョ、雄の動物、雄ヤギ、壮健で逞しいことの意味。


メキシコ社会には、年齢構造化された、伝統的なホモセクシャリティと、ジェンダー構造化されたホモセクシャリティの双方が、存在している。


しかし、近年は、ゲイ、レズビアン運動の波が押し寄せ、インテルナシオナルという、新しい概念が誕生した。


この概念は、両方の役目をこなし、ホモセクシャアル、ゲイ、レズビアンのアイデンティティと役割が、世界の中では国際派と見なされる人たちを指す。


グアダラハラ、メキシコ・シティなどでは、カミングアウトグループも、生まれようとしている。


また近年は、メキシコ及びその近隣諸国では、エイズ、HIVウイルス蔓延を食い止めるための研究、積極的行動主義が、盛んになりつつある。


つまり、メキシコについて考察する際には、古い伝統と、新しい性の生活様式を併せ持ち、急速に発展する国々と、より大きな世界システムという、二つの枠組みが必要であると、ギルバート・ハートは、言う。


まず最初に、伝統的なメキシコ文化を見ることにする。