もののあわれについて912 2018年01月01日 まづ一人たち出でて、几帳よりさし覗きて、この御供の人々の、とかう行きちがひ、涼みあるへるを見給ふなりけり。濃き鈍色の単に、萱草の袴のもてはやしたる、なかなかさまかはりて、はなやかなりと見ゆるは、著なし給へる人がらなめり。 まず、一人が立って、出て来て、几帳から覗いて、君のお供の人々が、行ったり来たりして、涼んでいるのを見ていられる。 濃い鈍色の単衣に、萱草の袴が、引き立ってい…続きを読む
もののあわれについいて911 2017年12月31日 御心にあまり給ひては、ただ中納言を、とざまかうざまに責め恨みきこえ給へば、をかしと思ひながら、いとうけばりたる後見顔にうち答へきこえて、あだめいたる御心ざまをも、見あらはす時々は、薫「いかでか、かからむには」など、申し給へば、宮も御心づかひし給ふべし。匂宮「心にかなふあたりを、まだ見つけぬ程ぞや」と宣ふ。 胸に余る思いは、一途に中納言を、あれやこれやと責めて、恨み言をおっしゃる…続きを読む
もののあわれについて910 2017年12月02日 年かはりぬれば、空のけしきうららかなるに、みぎはの氷とけたるを、「ありがたくも」と、ながめ給ふ。ひじりの坊より、「雪消えに摘みて侍るなり」とて、沢の芹、蕨など奉りたり。いもひの御だいに参れる。「所につけては、かかる草木のけしきに従ひて、行きかふ月日のしるしも見ゆるこそをかしけれ」など、人々の言ふを、何のをかしきならむ、と聞き給ふ。 姫 君がをる 峰のわらびと 見ましんば 知られやせま…続きを読む