踊れ歌えやピリピノ・ウェディング 23  ネグロス島バコロド平成29年5月(文責;コータ)

 わたしは、一滴の酒も飲まないのに、まるで自分が夢の中にでもいるような気がしてきた。日本でもやらないような派手な結婚式。いまは正装をしているけれど、化粧を落とし、ドレスを脱げば、すすけたバランガイの住民に戻る人たち。エイシァとフランシスが、多額の借金を抱えてでも、やりたかったことは、何なのだろう。  一期は夢か。いや、夢ではない。  確かにわたしたちはここにいる。日本の現実も、フィリ…

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踊れ歌えやピリピノ・ウェディング 22  ネグロス島バコロド平成29年5月(文責;コータ)

 1565年、スペイン人のレガスピが、セブ島に到着。その後ネグロス島に米が豊富にあると耳にして、ネグロス島の首長に、ビーズと引きかえに米を要求。それを契機に、スペイン人は、たくみな手段で首長をだまし、何度かの戦闘の後、ネグロス島を領有した。  ネグロス島が本格的に砂糖生産地帯と変わったのは、1840年代のこと。植民地政庁とカトリック教会が、ネグロス島を「目覚めさせる」ために、抜本的な行政・…

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踊れ歌えやピリピノ・ウェディング 21  ネグロス島バコロド平成29年5月

 エイシァとフランシスの結婚披露宴はたけなわ、そろそろ終わりに近づいた。日はとっぷりと暮れ、夜のとばりが下りている。  ふざけつづけていた司会のMCが、ふと表情を変えて、「それでは、新郎新婦の二人から、みんなへ一言いってもらおう」とマイクをフランシスに渡した。  若い二人は、舞台に立ち、集まった100人全員を、優しさをこめて眺め渡した。  僕からは、といい、言葉に詰まる…

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