もののあわれについて930

三日にあたる夜、餅なむ参る、と、人々の聞こゆれば、ことさらにさるべき祝の事にこそは、と思して、御まへにてせさせ給ふもたどたどしく、かつはおとなになりて掟給ふも、人の見るらむことはばかられて、おもてうち赤めておはするさま、いとをかしげなり。このかみ心にや、のどかにけだかきものから、人のため、あはれになさけなさけしくぞおはしける。 三日目に当たる夜は、餅をお召し上がりになるもの。と…

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もののあわれについて929

その夜も、かのしるべ誘ひ給へど、薫「冷泉院に必ず候ふべき事侍れば」とて、とまり給ひぬ。例の、ことに触れてすさまじげに世をもてなす、と、にくく思す。 その夜も、あの、案内役をお誘いになったが、薫は、冷泉院に、是非とも候しなければならないことがあります。と言い、お断りになった。また始まったものだ。何かと言えば、女に興味がない顔をする。と、匂宮は、憎らしく思うのである。 …

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もののあわれについて928

暗き程に、と、いそぎ帰り給ふ。道の程も帰るさはいと遥けく思されて、心安くもえ行きかよはざらむ事の、かねていと苦しきを、「よをやへだてむ」と思ひなやみ給ふなめり。 暗いうちにと、急いで、お帰りになる。道のりも、帰りは、とても遠く感じられて、気軽に、行き来できそうにないことが、今から、辛いが、一夜でも、欠かさぬようにと、気にやんでいらした。 まだ人さわがしからぬあ…

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