もののあわれについて950

はかなくて日ごろは過ぎ行く。七日七日の事ども、いと尊くせさせ給ひつつ、おろかならず孝じ給へど、かぎりあれば、御ぞの色のかはらぬを、かの御方の、心よせわきたりし人々の、いと黒く着かへたるを、ほの見給ふも、 薫紅に おつる涙も かひなきは かたみのいろを そめぬなりけり ゆるし色の氷とけぬかと見ゆるを、いとどぬらしそへつつながめ給ふさま、いとなまめかしくきよげなり。人々のぞきつつ見奉りて、「いふ…

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もののあわれについて949

世の中をことさらにいとひはなれねと、すすめ給ふ仏などの、いとかくいみじきものは思はせ給ふにやあらむ。見るままに物かくれ行くやうにて、消えてはて給ひぬるは、いみじきわざかな。引きとどむべき方なく、足ずりもしつべく、人のかたくなしと見む事も覚えず。かぎりと見奉り給ひて、中の宮の、おくれじ、と思ひまどひ給ふさまも、ことわりなり。あるにもあらず見え給ふを、例の、さかしき女ばら、今はいとゆゆしきこと、と、…

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もののあわれについて948

ただかくておはするを、頼みに皆思ひきこえたり。例の、近き方にい給へるに、御几帳などを、風のあらはに吹きなせば、仲の宮、奥に入り給ふ。見苦しげなる人々も、かがやき隠れぬる程に、いと近う寄りて、薫「いかがおぼさるる。ここちに思ひ残すことなく、念じきこゆるかひなく、御声をだに聞かずなりたりければ、いとこそわびしけれ。おくらかし給はば、いみじうつらからむ」と、泣く泣く聞こえ給ふ。物覚えずなりにたるさまな…

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