もののあわれについて925

あけぐれの程、あやにくに霧りわたりて、空のけはひ冷やかなるに、月は霧にへだてられて、木の下も暗くなまめきたり。山里のあはれなるありさま、思ひいで給ふにや、匂宮「このごろの程に、必ずおくからし給ふな」と語らひ給ふを、なほわづらはしがれば、 匂宮 をみなへし 咲けるおほ野を ふせぎつつ 心せばく やしめをゆふらむ と、たはぶれ給ふ。 薫 霧深き あしたのはらの をみなへし 心を…

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もののあわれについて924

姫宮も、いかにしつることぞ、もしおろかなる心ものし給はば、と、胸つぶれて心ぐるしければ、すべて、うちあはぬ人々のさかしら、にくし、と思す。さまざま思ひ給ふに、御文あり。例よりは、うれし、と、覚え給ふも、かつはあやし。秋のけしきも知らず顔に、青き枝の片枝、いと濃くもみぢたるを、 薫 同じえを わきてそめける 山姫に いづれか深き 色ととはばや さばかりうらみつるけしきも、言ずくなにこ…

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もののあわれについて923

あふ人からにもあらぬ秋の夜なれど、程もなく明けぬるここちして、いづれとわくべくもあらず、なまめかしき御けはひを、人やりならず飽かぬここちして、薫「あひ思せよ。いと心憂くつらき人の御さま、見ならひ給ふなよ」など、のちせをちぎりて出で給ふ。われながらあやしく夢のやうに覚ゆれど、なほ、つれなき人の御けしき、今ひとたび見はてむの心に、思ひのどめつつ、例の、出でてふし給へり。 逢う人次第…

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