もののあわれについて915

薫「あはれなる御ひとことを聞きおき、露の世にかかづらはむ限りは、聞こえかよはむ心あれば、いづかたにも見え奉らむ、同じ事なるべきを、さまではた思し寄るなる、いとうれしき事なれど、心のひくかたなむ、かばかり思ひつる世に、なほとまりぬべきものなりければ、改めて、さはえ思ひなほすまじくなむ。世の常になよびかなる筋にもあらずや。ただかやうに物へだてて、こと残いたるさまならず、さしむかひて、とにかくに、さだ…

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もののあわれについいて914

けざやかにおとなびても、いかでかはさかしがり給はむ、と、ことわりにて、例のふる人召しいでてぞ語らひ給ふ。薫「年ごろは、ただのちの世ざまの心ばへにて、進み参りそめしを、もの心細げに思しなるめりし御すえの頃ほひ、この御事どもを心にまかせてもてなし聞こゆべくなむ宣ひ契りてしを、思しおきて奉り給ひし御ありさまどもにはたがひて、御心ばへどもの、いといとあやにくもの強げなるは、いかに。思しおきつる方の異なる…

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もののあわれについいて913

総角 あげまき あまた年、耳なれ給ひにし川風も、この秋はいとはしたなくもの悲しくて、御はての事いそがせ給ふ。大方のあるべかしこきことどもは、中納言殿、阿闍梨などぞ仕うまつり給ひける。ここには法服の事、経のかざり、こまやかなる御あつかひを、人の聞こゆるに従ひて営み給ふも、いとものはかなくあはれに、かかるよその御後見なからましかば、と見えたり。 何年も、聞きなれた川風も、この…

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