もののあわれについて935

宮を、所につけてはいとことに、かしづき入れ奉りて、この君は、あるじ方に、心やすくもてなし給ふものから、まだまらうどいのかりそめなる方にいだし放ち給へれば、「いとからし」と思ひ給へり。うらみ給ふもさすがにいとほしくて、物ごしに対面し給ふ。薫「たはぶれにくくもあるかな。かくてのみや」と、いみじく恨み聞こえ給ふ。 宮様を、山里らしくないほどに、丁重に、お迎え申して、薫の君は、主人側扱いで…

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もののあわれについて934

道すがら、心苦しかりつる御けしきを思しいでつつ、立ちも帰りなまほしく、さまあしきまで思せど、世の聞こえをしのびて、帰らせ給ふほどに、えたやすくも紛れさせ給はず。御文は明るく日ごとに、あまたかへりつつ奉らせ給ふ。おろかにはあらぬにや、と思ひながら、おぼつかなき日数のつもるを、いと心づくしに見じと思ひしものを、身にまさりて心ぐるしくもあるなか、と、姫宮は思し嘆かるれど、いとどこの君の思ひしづみ給はむ…

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もののあわれについて933

明け行く程の空に、妻戸おしあけ給ひて、もろともに誘ひいでて見給へば、霧り渡れるさま、所がらのあはれ多く添ひて、例の、柴積む船のかすかに行きかふあとの白波、「目なれずもある住まひのさまかな」と、色なる御心にはをかしく思しなさる。山のはの光やうやう見ゆるに、女君の御かたちのまほにうつくしげにて、「かぎりなくいつきすえたらむ姫宮も、かばかりこそはおはすべかめれ。思ひなしの、わが方ざまのいといつくしきぞ…

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