もののあわれについて994

二月のついたち頃に、なほしものとかいふ事に、権大納言になり給ひて、右大将かけ給ひつ。右の大殿左にておはしけるが、辞し給へる所なりけり。よろこびにところどころありき給うて、この宮にも参り給へり。いと苦しく給へば、こなたにおはします程なりければ、やがて参り給へり。「僧など候ひて便なきかたに」と驚き給ひて、あざやかなる御直衣、御上襲など奉り、ひきつくろひ給ひて、下りて、答の拝、し給ふ、御さまどもとりど…

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もののあわれについて993

御琴ども教へ奉りなどして、三四日籠りおはして、御物忌などことつけ給ふを、かの殿には恨めしく思して、大臣内より出で給ひけるままに、ここに参り給へれば、宮「ことごとしげなるさまして、何しにいましつるぞとよ」と、むづかり給へど、あなたに渡り給ひて対面し給ふ。夕霧「ことなる事なき程は、この院を見で久しくなり侍るもあはれにこそ」など、昔の御物語ども少し聞こえ給ひて、やがて引き連れきこえ給ひて出で給ひぬ。御…

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もののあわれについて992

枯れ枯れなる前栽の中に、尾花の、物より異にて手をさし出でて招くが、をかしく見ゆるに、まだ穂に出でさしたるも、露を貫ぬきとむる玉の緒はかなげにうちなびきたるなど、例の事なれど、夕風なほあはれなる頃なりかし。 匂宮穂にいでぬ 物思ふらし しのすすき 招く袂の 露しげくして なつかしきほどの御衣どもに、直衣ばかり着給ひて、琵琶を弾きい給へり。黄鐘調のかき合はせを、いとあはれに弾きなし給へば、女君も…

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