もののあわれについて999 2020年11月08日 夜ふくるままに、御遊びいとおもしろし。大将の君の、あなたふと、謡ひ給へる声ぞ、限りなくめでたかりける。按察使も、昔すぐれ給へりし御声のなごりなれば、今もいとものものしくて、うち合はせ給へり。右の大殿の御七郎、童にて笙の笛吹く、いとうつくしかりければ、御衣賜はす。大臣おりて舞踊し給ふ。暁近うなりてぞ帰らせ給ひける。禄ども、上達部、親王達には、上より賜はす。殿上人、楽所の人々には、宮の御方よりしなじ…続きを読む
もののあわれについて998 2020年11月07日 宮の御方より、粉熟まいらせ給へり。沈の折敷四つ、紫檀の高坏、藤の村濃の打敷に、折枝縫いたり。銀の様器、瑠璃の御盃、瓶子は紺瑠璃なり。兵衛の督、御まかなひ仕うまつり給ふ。御盃参り給ふに、おとど、しきりては便なかるべし、宮達の御中に、はた、さるべきもおはせねば、大将に譲りきこえ給ふを、はばかり申し給へど、御気色もいかがありけむ、御盃ささげて、「をし」と宣へる声づかひもてなしさへ、例の、公事なれど、人…続きを読む
もののあわれについて997 2020年11月06日 かく女々しくねぢけて、まねびなすこそいとほしけれ。しか悪びかたほならむ人を、帝のとりわきせちに近づけて、むつび給ふべきにもあらじものを、まことしき方ざまの御心おきてなどこそは、目安くものし給ひけめ、とぞおしはかるべき。 こうして、女々しく、ひねくれているとのお話しの仕方は、可哀そうだ。そんなに良くない、おかしな人を、陛下が、特別、お傍に置きになり、親しくされるはずもありません。きち…続きを読む