もののあわれについて975

されど、見給ふ程は変はるけぢめもなきにや、のちの世まで誓ひ頼め給ふことどもの尽きせぬを、聞くにつけても、げにこの世は、短かめる、命待つ間も、つらき御心は見えぬべければ、のちのちぎりやたがはぬこともあらむ、と思ふにこそ、なほこりずまにまたも頼まれぬべけれ、とて、いみじく念ずべかめれど、えしのびあへぬにや、今日は泣き給ひぬ。日ごろもいかでかう思ひけりと見え奉らじ、と、よろづに紛らはしつるを、さまざま…

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もののあわれについて974

宮は、いと心苦しく思しながら、いまめかしき御心は、いかでめでたきさまに待ち思はれむ、と心げさうして、えならずたきしめ給へる御けはひ、いはむ方なし。待ちつけ聞こえ給へる所のありさまも、いとをかしかりけり。人の程、ささやかにあえかになどはあらで、よき程になりあひたるここちし給へるを、「いかならむ。ものものしくあざやぎて、心ばへも、たをやかなる方はなく、もの誇りかになどやあらむ。さらばこそ、うたてある…

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もののあわれについて973

中将の参り給へるを聞き給ひて、さすがに彼れもいとほしければ、いで給はむとて、匂宮「いまいととく参りこむ。ひとり月な見給ひそ。心空なればいと苦し」と聞こえおき給ひて、なほかたはらいたければ、隠れ方より寝殿へ渡り給ふ。御うしろでを見送るに、ともかくも思はねど、ただ枕の浮きぬべきここちすれば、「心憂きものは人の心なりけり」とわれながら思ひ知らる。 頭の中将が、お邸においでになったと、お聞…

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