もののあわれについて981

女、「さりや、あな心憂」と思ふに、なにごとかは言はれむ。物も言はで、いとど引き入り給へば、それに付きていと慣れ顔に、なからは内に入りて添ひ臥し給へり。薫「あらずや。しのびてはよかるべく思すこともありけるがうれしきは、ひかがみか、と聞こえさせむぞと。うとうとしく思すべきにもあらぬを、心憂の御けしきや」と怨み給へば、いらへすべきここちもせず、思はずに憎く思ひなりぬるを、せめて思ひしづめて、中の宮「思…

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もののあわれについて980

女君もあやしかりし夜のことなど、思ひいで給ふ折々なきにしもあらねば、まめやかにあはれなる御心ばへの、人に似ずものし給ふを見るにつけても、さてあらましを、とばかりは、思ひやし給ふらむ。いはけなき程にしおはせねば、うらめしき人の御ありさまを思ひくらぶるには、何ごともいとどこよなく思ひ知られ給ふにや、常にへだて多かるもいとほしく、「物思ひ知らぬさまに思ひ給ふらむ」など思ひ給ひて、今日はみすのうちに入れ…

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もののあわれについて979

宮は、女君の御ありさま、昼見きこえ給ふに、いとど御心ざしまさりけり。大きさよき程なる人の、やうだいいときよげにて、髪のさがり頭つきなどぞ、ものよりことに、あなめでた、と見え給ひける。色あひあまりなるまでにほひて、ものものしくけだかき顔の、まみいと恥づかしげにらうらうじく、すべて何ごともたらひて、かたちよき人と言はむにあかぬ所なし。はたちに一つ二つぞ余り給へりける。いはけなき程ならねば、かたなりに…

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