国を愛して何が悪い188

西行の歌は反省的であり、自己へ呼び掛けるようなものが多いのは事実だが、しかし彼ほど好奇心の強かった人はない。周囲に吹きすさんでいた内乱の嵐に無関心であったはずはない。激しい武士的な死と、僧の荒行による死と、京の強盗殺人の横行と、併せて落葉のように流転してゆく女房の哀音と、こういう状況にかこまれていた彼の心は穏やかであったろうか。 亀井 「世の中に武者起こりて、東西南北、いくさならぬ所無し…

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国を愛して何が悪い187

西行は、23歳の時、出家したが、その動機が不明である。 私の知る限りでは、身分の高い女性への、恋が原因だという説が多い。 だが、私は、同じ北面の武士であった親友が、昨日は元気にしていたが、翌朝に、死亡したという事実に、驚愕し、死、というものに対する、深い認識のゆえだろうと、考えている。 思い出づる 過ぎにし方を 恥かしみ あるに物うき この世なりけり まどひつつ 過ぎける方の…

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国を愛して何が悪い186

中世、特に、鎌倉時代とは、空前絶後の、信心決定、しんじんけつじょう、の時代であると言える。 それが、精神史に大きな影響を与えた。 法然以下そうだが、鎌倉仏教を支えた人々は、造型からも文学からも離脱し、信仰そのものの内的純化を志した。阿弥陀仏を信じたが、阿弥陀仏堂の荘厳美などはきれいに捨ててしまった。釈迦歌にさえ未練はなかったろう。源信の口称念仏ーーー易行・専心を、乱世の中で徹して行け…

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