もののあわれについいて914

けざやかにおとなびても、いかでかはさかしがり給はむ、と、ことわりにて、例のふる人召しいでてぞ語らひ給ふ。薫「年ごろは、ただのちの世ざまの心ばへにて、進み参りそめしを、もの心細げに思しなるめりし御すえの頃ほひ、この御事どもを心にまかせてもてなし聞こゆべくなむ宣ひ契りてしを、思しおきて奉り給ひし御ありさまどもにはたがひて、御心ばへどもの、いといとあやにくもの強げなるは、いかに。思しおきつる方の異なる…

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もののあわれについいて913

総角 あげまき あまた年、耳なれ給ひにし川風も、この秋はいとはしたなくもの悲しくて、御はての事いそがせ給ふ。大方のあるべかしこきことどもは、中納言殿、阿闍梨などぞ仕うまつり給ひける。ここには法服の事、経のかざり、こまやかなる御あつかひを、人の聞こゆるに従ひて営み給ふも、いとものはかなくあはれに、かかるよその御後見なからましかば、と見えたり。 何年も、聞きなれた川風も、この…

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もののあわれについて912

まづ一人たち出でて、几帳よりさし覗きて、この御供の人々の、とかう行きちがひ、涼みあるへるを見給ふなりけり。濃き鈍色の単に、萱草の袴のもてはやしたる、なかなかさまかはりて、はなやかなりと見ゆるは、著なし給へる人がらなめり。 まず、一人が立って、出て来て、几帳から覗いて、君のお供の人々が、行ったり来たりして、涼んでいるのを見ていられる。 濃い鈍色の単衣に、萱草の袴が、引き立ってい…

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